蒼路の旅人

蒼路の旅人 (新潮文庫)

蒼路の旅人 (新潮文庫)

全7作シリーズの第6作。第4作とこの第6作は、チャグムが主人公になる旅人シリーズで、他の5作はバルサが主人公の守り人シリーズとなる。
第5作の「神の守り人」上下巻を読んだのは、09年の夏だった。この第6作の文庫が出版されたのは10年の夏で、楽しみにしていたはずなのに、半年以上もスルーしてしまっていた(苦笑)。まあ、次作までの間隔が短くなったということで良しとしよう。多分今夏文庫化の予定だからね。
さて今作の内容は、南のタルシュ帝国から侵攻を受けているサンガル王国から、新ヨゴ皇国へ援軍依頼の文が届く。15歳になる皇太子のチャグムは、この依頼が罠だと気付きながらも、父である帝の陰謀に刃向かったため、自身も無事に帰れる見込みのない南への旅へと漕ぎ出すことになる。
圧倒的な広がりを見せる世界の中で、抗うことのできない強大な敵を目の前にして、心が折れることなく事態を見極め、民を守り国を守る為の唯一の道を見つけ、そして決断を下す。
このチャグムの決断が、壮大な世界の運命をどのように導くのか。シリーズ最終章「天と地の守り人」3部作がどんな結末を迎えるのか。数ヵ月後に読める事が楽しみでならない。
作者曰く、

私が心惹かれるのは、絶対の視点がない物語です。
俯瞰すれば無数の命がうごめく世界が見え、ぐっと近寄れば、ひとりひとりの人間のリアルな心の動きが見える。そして、そのひとりひとりの背後には、彼らを生みだしてきた歴史が感じられる・・・・・・そういう物語なのです。

まさにこの物語は、そういう物語だと思いました。