ナ・バ・テア

ナ・バ・テア (中公文庫)

ナ・バ・テア (中公文庫)

昨日の夜、咳がひどくて寝付けなかったから、寝るのを諦めてこれ読んでた。朝まで。
読みながらカタカナの書き方が独特だなと思っていたら、タイトルの意味がわかった。っていうか背表紙にちゃんと書いてあるし・・・。「ナ・バ・テア」=「None But Air」。ちなみに「スカイ・クロラ」は「The Sky Crawlers」。そして3作目の「ダウン・ツ・ヘブン」は「Down to Heaven」。こうやってみるとぴったりのいいタイトルだと思った。
この「ナ・バ・テア」はキタよ!久しぶりにグッとくる本を読んだ気がした。
話の流れ的には昨日読んだ「スカイ・クロラ」より前の話で、あの人の過去があの人自身の目線で語られている内容になっている。だからこっちを先に読んだ方がいい気もするけど、そんなに気にすることもないかな。
さて内容ですが、巻末の解説でよしもとばななさんが一言で分かりやすく言い表している。

どうせ絶望的な設定の中にある生なのだから、唯一の好きなことができなかったら死んでも同じだ、というような心境でもあります。それが文章全体にしみわたっているのです。
(中略)
現実でいちばん近いのは極端なうつ状態を理性でなんとかしているときの心境でしょう。

そんな心境の主人公が何を考え何を思うのか?前作で語られなかった背景が徐々に語られてきて面白くなってきた。主人公の大人に対する考え方も興味深かった。

みんな、自分が満足したい、自分のエゴを通したいのだ。ただし、そのままの姿では醜いから社会では生きていけない、けれど、ちょっとそれを隠すだけで、たちまちその醜さが善となる。客観的に見れば大差がないことなのに、ある一線から善になる。そういうのが、大人の社会の常識なのだ。